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東京地方裁判所 昭和61年(わ)2370号 判決 1987年2月23日

本籍

埼玉県鳩ヶ谷市本町一丁目一七二九番地

住居

同市本町三丁目二一番一三号

会社役員

小嶋英雄

昭和八年一一月七日生

右の者に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官江川功出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

一  被告人を懲役一年六月に処する。

二  この裁判確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、埼玉県鳩ヶ谷市本町三丁目二一番一三号(昭和六〇年九月三〇日以前は、東京都港区芝五丁目九番八号)に本店を置き、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等の製造販売等を目的とする資本金五〇〇万円のゼネラル電子産業株式会社の代表取締役(昭和五七年一〇月二四日以前は、取締役で実質経営者)として同会社の業務全般を統括していたものであるが、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外し、あるいは架空の荷造運賃を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五六年二月一日から同五七年一月三一日までの事業年度における前記ゼネラル電子産業株式会社の実際所得金額が一億一六五七万五一四九円あった(別紙(一)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年三月三〇日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対しその欠損金額が四二四万九〇八三円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六一年押第一二六二号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額四八〇〇万一五〇〇円(別紙(三)脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和五七年二月一日から同五八年一月三一日までの事業年度における前記ゼネラル電子産業株式会社の実際所得金額が三億八四二万九六〇四円あった(別紙(二)修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年三月三一日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三三〇〇万六六四八円でこれに対する法人税額が一二七二万八五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二八四〇万六一〇〇円と右申告税額との差額一億一五六七万七六〇〇円(別紙(三)脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書七通

一、被告人の収税官吏に対する質問てん末書

一、遠山あい子(二通)、小嶋利三(二通)、山陰邦恵(三通)、小嶋隆志、栗原敏昌及び竹中寛の検察官に対する各供述調書

一、収税官吏作成の次の各調査書

1  売上高調査書

2  売上値引返品調査書

3  荷造運賃調査書

4  販売手数料調査書

5  地代家賃調査書

6  水道光熱費調査書

7  交際接待費調査書

8  販売促進費調査書

9  雑費調査書

10  受取利息調査書

11  支払利息割引料調査書

12  貸倒損失調査書

13  交際費等損金不算入額調査書

14  繰越欠損金控除額調査書

15  申告欠損金調査書

16  受取手形調査書

一、東京地方検察庁特別捜査部検事作成の捜査報告書三通

一、検察事務官作成の捜査報告書

一、登記官作成の登記簿謄本三通

一、芝税務署長作成の証明書

一、押収してある五七年一月期法人税確定申告書一袋(昭和六一年押第一二六二号の1)及び五八年一月期法人税確定申告書一袋(同押号の2)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

本件は、被告人が経営していたゼネラル電子産業株式会社の昭和五七年一月期及び同五八年一月期の各事業年度の所得につき、被告人が、判示の所得秘匿の手段を講じた上虚偽過少の申告を行い、二事業年度分の法人税合計一億六三〇〇万円余を免れたというものであって、ほ脱税額が高額である上、ほ脱率も、昭和五七年一月期については、欠損が生じたので納付すべき法人税はないとして全く納付しておらず、一〇〇パーセントであり、同五八年一月期についても、約九〇パーセントであり、この点だけをみても犯情は芳しくない。ゼネラル電子産業株式会社は、被告人が昭和五四年八月に設立した会社であり、集魚燈の製造、販売を営んでいたものであるが、被告人は、同会社の設立以前に集魚燈の開発資金として借り入れた個人的な借金を返済する必要があったことや、受取手形の支払期日が長期のものが多く、現金化されるまでの期間がある上販売代金回収の点でも心配があったことなどから資金を留保するべく脱税に及んだ旨述べるが、いずれも脱税の動機として斟酌するべき事情とはいえない。そして、被告人は、各期中において、販売先から受領した受取手形の一部を自ら取り除いて保管し、各期末において、いわゆるペーパーカンパニーである日本船舶運輸販売有限会社に対する荷造運賃の架空計上を行うよう経理担当者に指示し、期末(昭和五七年一月期)あるいは期中(昭和五八年一月期)において、右日本船舶運輸販売を介在させて売上の一部除外を行うよう経理担当者に指示するなどの方法によりゼネラル電子産業株式会社の所得を圧縮し、前記のとおり納めるべき税金の大部分を免れていたものであるが、同社が業績不振と資金繰りの悪化で昭和六一年一月二二日に破産宣告を受けたことなどの事情もあり、税金の納付はほとんどなされていない。しかも、ほ脱所得の使途をみると、一部は簿外の接待交際費など経費として使われたものもあるが、相当部分は、前記の個人的な借金の返済や個人の貸金に充てられているのであって、これらの事情を考えると被告人の刑事責任は重大であるというべきものである。しかし、税金の納付がほとんどされていないのは前記のとおり会社が破産宣告を受ける状態にあるためであるところ、被告人は、現在ではスーパーキング商事有限会社の実質経営者として再び集魚燈の製造、販売を営み、同会社の業績も期待できるとして、今後は被告人個人が責任を持って未納税分を分割納付していく旨誓い、一部として合計二〇〇万円を納付していること、前記ほ脱所得の使途については理解し難い面もあるが、借金の返済及び貸金等としての支出のすべてが全く事業と無関係に被告人個人のために費消されたものとはいえないこと、被告人は査察、捜査の段階から事実を認め今後の過ちなきことを誓っていること、考慮すべき前科前歴はないこと、その他被告人の健康状態などを総合勘案すると被告人に対し刑の執行を猶予するのが相当であると判断されるので、主文のとおり量刑するものである。

(求刑 懲役一年六月)

よって、主文のとおり判決する。

(弁護人 原哲男)

(裁判官 石山容示)

別紙(一)

修正損益計算書

ゼネラル電子産業株式会社

自 昭和56年2月1日

至 昭和57年1月31日

<省略>

別紙(二)

修正損益計算書

ゼネラル電子産業株式会社

自 昭和57年2月1日

至 昭和58年1月31日

<省略>

別紙(三)

脱税額計算書

会社名 ゼネラル電子産業株式会社

(1) 自 昭和56年2月1日

至 昭和57年1月31日

<省略>

(2) 自 昭和57年2月1日

至 昭和58年1月31日

<省略>

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